手技を学ぶということ
IMICの石川貴章です。
当校のホームページへお越しいただきまして、ありがとうございます。
今回は「手技を学ぶということ」
というテーマで話を致します。
手技を上達させるためには・・・
歌手の井上陽水さんの「海へ来なさい」という曲を聞いたことがありますでしょうか。
なかなかの渋い選曲になりましたが、この歌詞の中で、
「どこまでも泳げる力と いつまでも唄える心と 魚に触れるような しなやかな指を持ちなさい」
「星屑を数える瞳と 涙を拭えるような しなやかな指を持ちなさい」
というフレーズがあります。
とても独特な世界観、さすがの陽水ワールドですが、
まさにこの、魚に触れるような、涙を拭えるようなしなやかな指になることが
手技を上達させるためには大事なのです。
こんな抽象的な話だけでは教育者としては失格なので、
それがどんなことなのかお話します。
しなやかな指になるということは・・・
例えば、うつ伏せの患者さんの背中に手を当てて、床方向に圧を加える操作をするとします。
簡単なようですが、やり方によっては「痛い」とか「苦しい」と患者さんを困らせてしまいますし、
施術者側も、「うまく押せない」「力が入らない」「手が痛い」「腰が痛い」などと、
どうにも上手くできない様子になることがあります。
これはなぜかというと、一言でいえば
「一番最初に手に力を入れてしまうから」
です。
力の出力方法を間違えると、横になっている患者さんにむしろ支えてもらっているような状態、表現を変えれば、横になって静止している患者さんに押されて跳ね返されている状態になってしまいます。
そうするともちろん上手く押せない、力が入らない感覚になりますし、患者さんに苦痛を与えるだけになってしまいます。
なぜそのような事が生じるのか、それは最初に患者さんの身体に触れたその瞬間に条件反射的に手を固定し過ぎてしまうからです。
「スラックアウト」というものがあります。
これはつまり患者さんの身体に何らかの手技を施す時に、
接触したポイントが皮膚や脂肪で滑ってしまうと危険なので、予め圧を加える方向、操作を加える方向に圧を加えながら固定する方法です。
しかしこのスラックアウト、いわばファーストコンタクトの際に手を力ませすぎると、もうそこから正しく力を出力することはできない、後戻りはできなくなるのです。
イメージするならば、生卵を持つ時の感覚です。強すぎれば殻を破ってしまいますし、弱過ぎれば手元から落ちてしまいます。
皆さんが生活の中で手を使う時には全て、このようなコントロールが生じているのですが、
手技という慣れない動作では、多くの方がこのようなエラーを起こしてしまいます。
このエラーに気づかずに手技の練習をそのまま重ねてしまうことが何よりも悲惨です。
力はすでに効率的に伝えることができないのに、伝えようと無理に身体に力を入れたり、
無理に腕力に頼ろうとすると、施術側もケガをしたり、患者さんにも危害を加えてしまう可能性が生じてきます。
様々な手技を修得するためには、まず手技の基本をきちんと理解し、体現できるようになる必要があるということです。
真似事で出来るほど簡単ではありません。
逆を言えば、それが分かれば無理な力など一切必要なく、適材適所、適応性の高い、様々なアプローチを修得することができるでしょう。
さらにはこの感覚自体が患者さんのお身体の状態を分析し評価していく時の基本でもあり、
脊椎の小さな関節の動きを感知したり、筋肉の正しい収縮を感じ取るといった局面において、
その精度に歴然とした違いが出てきます。
また患者さんのお身体を扱う際の一つ一つの細かな所作としても、その違いが現れてくるものなのです。
きっと多くの患者さんは触れられたその瞬間に、その「違い」を肌で感じるでしょう。
しなやかな指になることは、整体の手技において何より重要なです。
石川整体インターナショナルカレッジ
石川貴章
石川貴章。IMIC学長。石川カイロプラクティック総院長。RMIT大学カイロプラクティック学科日本校の臨床テクニック、臨床学の元常任講師。