腰痛椎間板ヘルニアに対する対処法のご質問

腰椎椎間板ヘルニアに対する腰部の鑑別や治療の方法について

質問:整骨院を運営しています柔道整復師です。

腰椎椎間板ヘルニアについてご相談させて頂きたいのですが、整形外科で腰椎椎間板ヘルニアと診断された方が多く来院されます。その為、腰部の牽引を行うツールを導入しましたが効果を示している患者さんがおらず、しっかりとした知識と治療技術を修得したいと考えています。正直、腰部の鑑別の方法やその基本的な知識も理解できていません。宜しくお願い致します。

Ishikawa Case Advice ~石川貴章のケースアドバイス~

ご質問ありがとうございます。腰椎椎間板ヘルニアについて、また腰部の基本的な知識と鑑別方法、治療技術をしっかり修得されたいとのことですが、まず大前提として腰部及び腹部、股関節を含む下肢の解剖学と運動学などの基本的な部分はこれまでに学ばれた部分の復習と更なるアップデートが必要になってくると思います。

まずはじめにお伝えしたいのは腰椎椎間板ヘルニア(Lumbar Disc Hernia:以下LDH)を鑑別し的確な治療を実施するためにはLDHだけの知識を学んでも実践では意味を成しません。

想定できる全ての可能性を熟知し、それらを元に患者さんの現症を正しく理解した上で根拠をもって鑑別をしていく能力が必須となります。LDHは言わば腰痛症の氷山の一角でしかありません。さらにはここで明確にお伝えしておきたい事として、LDHになった状態をそのまま改善していこうとしても、それは無理なことです。

最も大切なことは

「なぜ椎間板ヘルニアになったのか」
を考えていくことです。これを考えなければいけないのは誰でもない、患者さん自身です。
不慮の事故などによる外傷を除いて、椎間板ヘルニアを起こす原因は「不適切な同一姿勢」と「不適切な反復動作」しかありません。
かなり広義な表現ですが、これを患者さんのそれまでの実生活や生活環境を詳しくヒアリングし、患者さんと共にLDH発症に至った経緯を見つけ出さない限り、どんな優れた治療ができても、それは対処的なものに過ぎなくなってしまいます。
本当の意味での根治というのは、その原因を理解し対策し、改めること以外にありません。
我々はそのお手伝いをしている、ガイダンスをしているだけです。

腰部疾患の分類にはMacnab分類

腰椎椎間板ヘルニア、治療法

腰部疾患の分類にはMacnab分類というものが古典的にありますが、神経系、血管系、筋骨格系、内臓疾患、全身疾患などを大別し、それぞれを検討し鑑別しなさいというものです。腰部疾患には特定の病理から全身性症状の一環とて腰部症状を呈する場合、代表的なものには悪性腫瘍や感染症、膠原病や内臓病変などが挙げられます。これらは腰部症状に限ったことではありませんが、健康状態の基本的なチェック(バイタルチェック)とヒアリングによって緊急性のある疾患は潜んでいないか、専門医にコンサルする必要はないかを特に初見時に把握する必要があります。実際に有効なのは初診時の問診表かと思います。

急性であれ慢性であれ、専門医からLDHの診断を受けていたとしても、改めて再考されることをお薦めします。

腰椎椎間板ヘルニアの画像検査について

腰椎椎間板ヘルニア、治療法

LDHの有無、その進行度とタイプを確認するためには画像検査(X-ray.MRI)が必須となりますが、その原因と周辺の軟部組織の状態までは画像では分かりません。

さらにはヘルニア陰影の存在、椎間板高の減少だけではそれが本当に患者が訴えている腰部痛の主犯かどうかは断定できません。

特にある一定の年齢に達すれば、いくつかの脊椎高位において
☑椎間板高の減少
☑椎体終板の不鮮明さ
☑骨棘形成などのいわゆる退行性変化
は必ず存在するものだと考えます。

それを患者の愁訴の原因と確定するためには、やはりヒアリングと鑑別が必須であると考えています。

腰椎椎間板と似た症状を呈する障害や機能低下は何がある?

腰椎椎間板ヘルニア、治療法

腰部椎間板ヘルニアと非常に似た症状を呈する障害や機能低下、症候群をいくつ挙げることができますでしょうか。人体を構成する殆どの構造はそれぞれ発生学的機序に基づき、関連領域に関連痛を呈する場合があります。

・椎間関節(関節包)由来の硬節痛
・仙腸関節由来の関連痛
・椎間板由来の関連痛
・筋肉の関連痛
・体制内臓反射
等々、それぞれのメカニズムとその関連痛パターンを熟知する必要があります。
さらに
・脊髄障害
・神経根障害
・末梢神経障害
の鑑別も必須です。

これら個々の詳細を修得し、さらに各々の関係性を知り、ケーススタディを反復して鑑別のデータベースを自己に構築するしかありません。

腰部椎間板ヘルニアと他の問題を鑑別する検査とは

その上で大きな味方になってくれるのが神経学検査であり、障害高位の推測と安全性の確保、さらに神経障害とその他の関連痛の鑑別にも有用な所見を与えてくれるものです。

さらにLDHを含む神経根障害においてはその重症度の指針にもなります。

有用な評価手段として整形学検査がありますが、例えばSLRが+だからLDHだという考え方ではなく、SLRは腰部における屈曲系の評価であり、伸展系の評価、回旋系の評価、さらにはSLRの確認法、WLRなどの裏付け法もありますので、単一で用いることなく消去法かつ確定的に評価方法を組み立てて下さい。

有効な施術とは

腰椎椎間板ヘルニア、治療法

有効な施術というのは、腰椎椎間板ヘルニアはこう治すという方法論ではなく、これまでの鑑別評価に加え、患者さん本人の機能性評価がなければ何をどれくらい改善していくかのターゲットがありません。その機能性が失わ続けた結果がLDHだということを理解してい下さい。シンプルな例で言えば、股関節の極端な伸展制限、内旋制限、仙腸関節の伸展制限、下部胸椎の伸展性の低下が著明、毎日の長時間のデスクワークで、週末はゴルフ三昧。後にLDH発症した場合、改めるべきは何でしょうか。施すべきは牽引でしょうか。

むしろその答えは誰よりも患者さん自身が本当は分かっているものでもあります。

上記にあげた各々の評価手法と具体的な施術方法などのサンプルをIMICのYou tubeにて配信していますので、ぜひご参考にしてください。

IMIC学長
石川貴章




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腰椎椎間板ヘルニア、治療法

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動画の内容は、テクニックや知識の極一部です。テクニックはスポットだけで使用するのではなく、
患者様の症状の鑑別、そして詳細な身体の分析を行い、患者様がより早く改善するように行うものです。
参考程度の動画だという事は予めご了承ください。


参考動画:腰仙関節及及び両側仙腸関節に対するテクニック