サッカー選手の足関節捻挫の施術法・対策法
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足関節捻挫に対策についてのご質問
スポーツトレーナーとして活動している者です。サッカーチームで選手のケアをしておりますが、足関節捻挫の場合、今の私にできることは捻挫直後数日のRICE処置と周囲のスポーツマッサージ、テーピングだけで、もっと具体的で効果的な施術ができればと考えています。
一度足関節捻挫をしてから繰り返す選手が多く、何かもっと貢献できないかと思っています。石川先生は足関節捻挫に対してどのような対応をされているのでしょうか。数々のトップアスリートのケアに尽力されてこられたと伺っています。少しでもアドバイスを頂ければ幸いです。宜しくお願い致します。
Ishikawa Case Advice
ご質問頂きありがとうございます。私自身幼い頃からずっとサッカーをしておりましたので、少しでもお役にたつアドバイスをさせて頂けたらと力が入る想いです。
足関節捻挫は予防が大切
サッカーという競技の特性により足関節捻挫を生じる確率は非常に高く、出来る限りの予防が何よりも重要であると考えます。
選手の年代や経歴に関わらず、テーピングやサポーター、バンテージでの固定などが有効です。
毎回の練習や試合の前にテーピングやバンテージを施すことは手間のかかることですが、シンプルな巻き方(ヒールロック、フィギュアエイトなど)でも捻挫歴がなければ十分ですから、できるだけ毎回の習慣にすべきだと考えます。
実際にはテーピングは毎日のように使用するとなればコストも掛かりますので、足首のサポーターやバンテージが現実的かと思います。
試合の際にはトレーナーの先生からテーピングを施すようにするのも良いですね。
サッカー選手は足のアフターケアが必須
足に関する様々なケアも重要です。練習後の疲労回復(例えばアイシングやストレッチなど)をきちんと実施しているか、これは足首周囲だけに限定した話ではありません。足趾部、足甲、足底、下腿部、膝関節部、大腿部、股関節、腰部までは最低限でも毎回のアフターケアが必須です。選手自身がすべきこと、トレーナーの先生はじめサポート側がすべきこと、これを明確にしてできる範囲でアフターケアを継続することが大切です。
アフターケアの重要性は皆分かっているはずですが、プロレベルのアスリートでも以外とアフターケアが充実していないことが少なくありません。練習やトレーニングだけしていれば上達するというのは大昔の話です。
足関節捻挫に対する考え方
それでは本題ですが、足関節捻挫の考え方をお伝えしていきます。
ヒアリングを行う
まずはじめに選手からしっかりヒアリングをして下さい。どんな状況で捻挫したのか、
受傷時の細かなシチュエーションを聞き出すことで、生々しくそのシーンを連想し足首にどんな衝撃が加わったのか、どんな組織(靭帯、関節包、腱、筋肉など)が損傷したのかをイメージします。
受傷から何日何時間経過したのか、受傷直後のRICE処置は施したのか、増悪動作(主にどの構成運動で疼痛が生じるか、増強するか)、動作時痛なのか自発痛なのか、随伴症状はないか(特に足趾、足甲、足底の痺れや感覚異常など)、過去に捻挫歴はないか。
これらは現状を正しく把握するために最低限必須なヒアリング項目です。
足関節捻挫の前に不具合は?
通常であればこのヒアリングができれば十分な情報収集と言えるかもしれませんが、ここでさらに、「足関節捻挫を受傷する前の身体のコンディションや身体のどこかに不具合を抱えていなかったか?」を入念に聞き出すことがポイントになります。
ハードなスライディングを受けた、着地の瞬間に捻った、そんなシチュエーションを聞くと、我々はつい「不慮の外傷」と決めつけてしまいますが、本当にそうでしょうか。
いつも来る日も来る日もトレーニングし、試合も何度も経験してきた選手がなぜその日は捻挫したのでしょうか。
例えばピッチのコンディションが悪かった、冬で冷えていた、アップが十分でなかった。
それが捻挫発生の決定的な原因と言えるなら、なぜ他の選手は捻挫をしなかったのでしょうか。同じ試合の中で激しいタックルやスライディングを受けた選手は他にも何人もいるはずです。
実は腰に違和感があった、背中のハリを感じていた、逆足の膝に痛みがあった、このところお腹の調子が悪かった、数日前から頭痛が続いていたなど、一見関係のなさそうなことでも先入観を持たずに聞き出してください。
それがどう足関節捻挫に関係したのか、それはどんな理屈を並べても推測の域を脱しませんが、人体の連動性、ネットワークというのは常に関わってくるものです。それが運動学的なものか、神経学的なことか、いづれにせよそのような「素因」を探り出す努力は無駄にならないということを私は経験的に感じています。
何故」足関節捻挫が生じたのか
どんなケースにも共通して言えることですが、患部をしっかりアセスメントすることは大前提ですが、それと同時に「それがなぜ生じたのか、原因は何なのか」という視点を持つことが優れた臨床のための重要なポイントです。正解は誰にも分からないことかもしれませんし、原因に辿り着くとは限りません。そして原因を追及するということは、じゃあその原因の原因は?と堂々巡りになるかもしれません。それでもその思考を放棄せずに考えるプロセスが大切で、そのプロセスで見えてきた考えらえれる原因を一つに限定せずに施術のマネジメントに組み込んでいくのです。
様々な要因が組み合わさった時に身体のトラブルは生じるものです。
その為にヒアリングを軽視せずに情報収集をしっかりすることがマストであって、さらに患者さん自身がご自分の症状について、その原因をどう考えているかを直接尋ねてみることをお奨めします。
患者さんは自分の身に起きたトラブルについて誰よりも自己分析をしているものです。
記憶を遡り、何かしたかな、何か関わってるのかな、どうしたら治るかなと考えられています。
でも先生や専門家を前にすると自分の考えを遠慮して言えなかったり、勝手な解釈と思われるかなと伝えることをしない方が少なくありません。
一見関係なさそうだと思えるようなことでも、何でも教えてくださいと尋ねてみてください。誰よりも患者さん自身がそのヒントをすでにお持ちの場合が少なくありません。
足関節捻挫の評価
次に具体的な足関節捻挫の評価についてですが、
・患部の炎症反応の程度を確認してください。発赤、腫脹、浮腫、内出血などの確認です。健側との左右差をよく比較してください。
・続いてROMの評価です。可動域と疼痛の有無、もし疼痛が誘発されたら、可動域を増すことで疼痛が増強するのか、ある一定の角度でのみ生じる疼痛なのかを確認します。
背屈、底屈、内返し、外返し、内反、外反の評価が必須です。
内返しでは疼痛は生じないのに内反すると痛いとなると底屈動作に関わる組織の炎症もしくは機能障害を疑う、さらにその内反時の疼痛部位が外果側か内果側か、場合によっては足関節前方、距骨後方などの疼痛も考えられます。
それを受傷時のシチュエーションと重ねて、どんな組織がどんな状態(過度な伸張での炎症発生か、過度な収縮での炎症発生か、どのエリアの関節包、靭帯の損傷かなど)を検討します。
そこで一つ注意したいポイントが関節のHyper-mobility(ハイパーモビリティー:可動域の増大、不安定性、動揺性)が生じていることが多くの足関節捻挫には起こります。
これは概ね捻挫による軟部組織の支持性の低下によるものですが、そのHyper-mobilityを増大させるような施術は控えるべきということになります。
さらには、急性期以降の多くの場合、このHyper-mobilityを代償するための二次的なHypo-mobility(ハイポモビリティー:可動性低下、運動制限)が併発することがあります。
これが炎症鎮静後の回復を良好にするか不良にするかを左右する要因の一つになる場合があるかと思います。
これらの詳細な評価分析には各々の関節における滑り、転がり、軸回旋の評価をする関節機能評価のスキルを修得している必要があります。
足関節捻挫に対するアプローチとまとめ
急性期で炎症反応を強く呈している場合、自発痛を訴える状態では積極的なアプローチは控えるべきと考えますが、炎症反応が鎮静したきたタイミングで残存する腫脹や浮腫の排出を促すようなマッサージと、何よりも前述した関節機能評価に基づくHypo-mobilityに対するManipulation(関節機能調整)が有効であると考えます。
足関節捻挫は受傷そのものの衝撃で軽度の関節列内でのImpingement(インピンジメント:衝突)を生じています。これを修正することで正常な関節機能を取り戻し、治癒の促進と再発の予防を行います。主に腓骨と脛骨(近位脛腓関節、遠位脛腓関節)踵骨、距骨、舟状骨、楔状骨(内・中・外)、立方骨、中足骨(第一から第五)の評価と施術が最低限必要であると考えます。またMMT(Manual Muscle Testing)による各筋機能の評価と筋トーンの調整も同時に重要なポイントになります。
治療経過の判断においても、しっかりとした出力ができており、関節を代償運動なしに固定できる機能が回復していれば本格的な復帰も近いと判断できると思います。
ヒアリングから想定された素因の要素にも同時にアプローチを加えていくこと。
またそれをきっかけに足関節だけに捉われることなく身体を包括的にマネジメントすること。
さらにその考え方を選手に身をもって理解して頂くことで、運悪く偶然ケガをしたのではないのだということ。
そして身体のケアの重要性を伝えていくことが選手の成長を支えることになると私は思っています。
足関節と関わる軟部組織の評価方法等のサンプルをIMICのYou-tubeで配信しておりますのでご参考になさって頂ければ幸いです。
IMIC学長
石川貴章
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ISHIKAWA CASE ADVICEでは皆様からの臨床におけるご質問などを受け付けております。
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・闇雲に施術をしている
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動画の内容は、テクニックや知識の極一部です。テクニックはスポットだけで使用するのではなく、
患者様の症状の鑑別、そして詳細な身体の分析を行い、患者様がより早く改善するように行うものです。
参考程度の動画だという事は予めご了承ください。
足のアプローチ動画
石川貴章。IMIC学長。石川カイロプラクティック総院長。RMIT大学カイロプラクティック学科日本校の臨床テクニック、臨床学の元常任講師。